ここで毒抜きさせて、

残酷な思いを吐き出す場所

私の婚活③

「こんにちは!調子はどうですか?」




日頃、お客さんに話し掛けるイメージで、

声が小さくならないように気を付けて、

私は彼女に声を掛けた。




彼女はホッとしたような笑顔を見せた。


「ん~、断られ続けて、話し掛けるの恐くなっちゃいました。」


その笑顔に私も安堵し、

次に繋げた。


「そうですよね~後もう少しですし、

 テキトーに時間潰してればいいんじゃないですか?」


近くで観る彼女は、

本当にキレイで可愛いかった。

タイトなスタッフポロシャツから解る華奢な身体。

白い肌、小さい顔に長い手足、

はっきりとした目鼻立ち、

誰が見ても、

タイプとか関係なく、

彼女は美人だった。



年齢は25歳ぐらいか。


雑談を1分程した後、



「あの、、、僕、、引っ越してきたばかりで、

 まだこの辺りのことよく解らないんです、

 で、、、良かったら御飯美味しいとこ教えてください。

 連絡ください、待ってます。」



と言って、携帯番号を書いた名刺を渡した。


彼女はそれを、


「あ、は~い。」


と言って受け取った。

可もなく不可もなくといった感じだった。

ちなみにその店舗への異動で私が引っ越して来て1年半が経っていた。



「それじゃ、休憩入ります、がんばってください!」


そのままバックルームに入った私は、

達成感で満ち溢れていた。

やるだけやった、

これで後悔はしない。

後は野となれ山となれ。







休憩から上がり、

彼女の姿はなかった。


後輩から、


「可愛かったすね~」


と話し掛けられた。



その一言だけで、

私は誰の事か解ったし、

後輩も、

その一言だけで解ると思ったのだろう、


彼女はそれほど、

あの空間では異質だった。



「太郎さん、ナンパしたでしょ、

 僕も連絡先渡そうと思って、

 あの子が帰る時に話し掛けたんですよ。」



「ん、、、マジで、、、で、、?」



「話し掛けられました?って話し掛けたんですよ、

『お客さんに話し掛けることが出来たかって』

 って意味だったんですけど、

『あの人に話し掛けられて連絡先もらいました。』

 って指差したのが太郎さんだったんで、

 全力で引き下がりましたよ。」



「そ、そうか、ありがとう。」



その後輩は24歳で、

なかなかのイケメンでプレイボーイだったから、

本気で安心した。




そうか、

私が休憩から戻った時、

彼女はちょうど帰るところだったのか。

気付かなかったが、

店入り口のすぐ外で後輩と話をしていたんだな。








21時半、

仕事が終わり、

携帯を見た。



彼女からの連絡はなかった。

車に乗り込んで、

溜め息をついた。

「ですよね~、連絡来るわけないよね~、彼氏おるに決まっとるわ!」

と声に出した。


私は意気消沈しつつも、

自分の行動力を誉めてあげたかった。


まぁ、やれることはやった、

これで、

後悔することはない。


明日は友人の結婚式、

出逢いないかな、


気持ちを切り替えようとはしたが、

彼女の姿、

笑顔を思い出そうとしている自分もいた。




妙にハイな気分を圧し殺しながら、

店の駐車場を出て岐路に着いた。















私の婚活④に続く