私の婚活②
5年間同棲していた彼女が家を出て行き、
10日後ぐらいだったと思う。
その日、私はいつも通りに出勤した。
私の職場は、アウトドア系趣味の小売店。
制服を着て店頭に出た。
1人の女性が店内の大型テレビの前に立っていた。
そのテレビには、
一日中、アウトドア系趣味の有料放送が流れ続けている。
その有料放送を店内の客に勧誘するスタッフが3ヵ月に一回程、放送会社から派遣されてくる。
彼女はそれだった。
私は、いつものように、
「こんにちは!ガンガン声、掛けちゃってくださいね~」
と挨拶するハズだった。
しかし、
私は彼女に歩み寄り、
「こ、こんちは。」
とだけ、小さく言った。
その時に、
私は自分自身が緊張していることに気付いた。
私は全く人見知りしない。
職業柄、人見知りとは縁遠い。
レジ裏から彼女を見た。
視線を外しても、
また次の瞬間には、また彼女を見ていた。
一目惚れだった。
「一目惚れ」とは、
内面を考慮せず、
初見の外見だけの印象で衝動的に、
惹かれてしまうこと。
彼女が私のタイプな女性であることは間違いなかったが、
その判断より先に、
息苦しさを覚え、
神経が高ぶり、
一言交わしただけの女性を、
“好き”
だと思った。
私はレジ内で業務を進めながら彼女を目で追っていた。
売場の什器で姿が見えなくなると、
気になって仕事どころではなかった。
「そろそろ休憩入って、」
そう主任から言われたのは16時半過ぎだった。
あ、そうか、
私が休憩から戻った頃には、
勤務が17時までの彼女はもういない。
彼女は明日もこの店に出勤するようだったが、
明日、私は友人の結婚式があり、仕事が休みだった。
もう、会うことは、ないだろうな、
それは、嫌だな。
後悔するだろなー、
それは、嫌だな。
後悔だけは、
嫌だなぁ。
“声を掛けよう、連絡先を渡そう。”
そう思った。
自分の名刺の裏に携帯番号を書いた。
準備は出来たが、
緊張で足が動かない。
視界の中にいる彼女に、
これをどうやって渡すか、
イメージトレーニングをするも、
身体は強張っていった。
出勤時、
私は彼女に話し掛けたが、
ただの挨拶。
今から試みようとしてるのは、
“私は、あなたと、お近づきになることを望んでいます。”
とういう告白である。
私は連絡先を女性に手渡すなどは、
したことがない。
一度、彼女の方向に歩き出しては、
什器を一週しては戻ってきたり、
遠目から覗いたりしていた。
なかなか、後一歩が踏み出せないでいた。
そして、
「ちょっと、早く休憩入ってよ。」
と、主任に急かされ、
私は覚悟を決めた。
その覚悟が後の人生を大きく変えることになった。
私の婚活③に続く